20140909

あの二人、本当仲良しなの。それはクローム髑髏の言だ。
ほんのり頬を染めて、それはもう自分のことのように嬉しそうに話す彼女に、周りも和むのが常。でもまあ、話題はあの二人なので、和んでばかりもいられない。
傍から見れば壮絶な喧嘩でさえ、彼女はそう言い切るのだから、まあ、なんというか。
彼女には些細な痴話喧嘩にでも見えてるんだろう、そう思うほかない。
けれどまあ、何かと骸と行動することの多い彼女からしてみれば、この二人には喧嘩が付きものなので、今更気にならないだけだ。
現に今も。

「ちょっと! あれは僕が仕留めるって言っただろう」
「何ですか、君だって僕の獲物かすめ取ったでしょう!」
「君が遅かっただけだろう」
「だったら君だって同じですよ」

黒塗りの、いかにもな車の後部座席。一触即発の空気を漂わせる二人をバックミラー越しにちらりと確認してから、クロームは狭い路地へと車を滑り込ませた。
今回の任務はスリーマンセルで、群れを嫌う雲雀を強引に巻き込んだのが数時間前。
ボンゴレの下っ端の幻術を被った三人が車を走らせて早一時間。骸とクロームの幻術は見破られることなく順調に進行中。付け狙ってくる相手は、まさか標的にしているのが幹部の、それも敵に回さずとも厄介で仕方ない二人が居るは気づいてもない。
そんなこんなで、ばれてないせいで雲雀お得意のトンファーも、骸の幻術も何も使えないでいる。

「さっさとばれればいいのに」
「はい? 僕の幻術があの程度の輩に見破られる訳ないでしょう」
「銃とか面倒。殴った方が早いだろう」
「それは否定しませんけど」
「ほら、君だって同じだ」

がうん、がうん。弾丸が撃ち出される音は止まない。
銃撃の合間に喋っているのか、その逆か。そんなのどっちだって構わないけれど、先ほどまでの険悪な雰囲気も落ち着いたようで、クロームは再びミラー越しに二人の姿を確認する。
弾倉を入れ替える二人に苛立ちは感じられなくて、クロームはあれ、と首をかしげた。前を見据えたままさてどうしてかと考えるけれど、それもすぐに解決する。
二人が同調したからだ。一度落ち着いてしまえば、次の起爆剤が破裂しない限り、二人は至って大人しい。
まあ、元々爆弾みたいな二人なので、些細なことで簡単にぱーんと起爆するんだけれども。
薄暗い路地を駆け抜ける車は、障害物を避けたり弾き飛ばしたりしながら目的地である古ぼけた屋敷をひたすら目指す。
追いかけてくる輩が前方の障害物を打ち抜いて妨害しようとしてくるけれども、ハンドルを握るクロームは顔色一つ変えずにハンドルを切って躱してしまう。
その瞬間、後ろからわずかに息を詰める音がして、クロームはそっとミラーへと視線を走らせる。
勢いよくハンドルを切ったせいでバランスを崩したらしい雲雀が、骸に倒れかかっている姿が確認できて慌てて視線を逸らした。
だってあんまりも見てたらそれが起爆剤となってまた喧嘩したらたまったもんじゃない。
骸だけでなく、雲雀とだって付き合いが長いクロームは、二人の性格をしっかりと把握していたりする。
それでもまあ、恥ずかしさが先に立ったのだろう雲雀が慌てて離れて、二人ともわざとらしい咳なんかして。
意識しなければ、バランスを崩しただけって言い張れたのにね、なんてクロームが表情を変えないまま内心で微笑んだ。

「…っそれにしても、目的地はまだですか?」
「もうすぐです、骸様」
「そこに着いたらもう好きにして良いんだろう?」
「うん、後は好きして良いってボスが言ってた」

珍しく、あの温厚なボスが二人の好きにして良いのだと言った任務。
生死問わず、なんて珍しい任務だからこそ、雲雀を丸め込めたのだと骸もクロームもよく分かっている。
人気の無い路地を抜け、ゴーストタウンのように静まった広場へと車を滑り込ませて、クロームは漸くブレーキを踏む。
後続の敵の車は、骸たちの車を囲うように停まり、寂れた広場はあっという間にその様を変える。

「さぁ、そろそろ片を付けましょうか」
「手出しは無用だよ」
「分かってます。君こそ、僕の邪魔はしないでくださいよ」
「誰に物を言ってるの」

ぎらついた視線は、獲物を前にした獣のそれ。
既に車外の敵は、取り囲んだ車に銃を向けているというのに、それすら気にせずにドアを開け放つ。
それと同時に。骸が今までかけていた、下っ端のカモフラージュが解けて。
敵が狙っていたのがこの二人だったなんて気付いた時には、もう遅い。

(骸様も、雲の人も、楽しそう)

弾丸を物ともせず、傷を負うことを躊躇しない雲雀のトンファーが唸りを上げて。
火柱が上がり、地面が割れて、そんな中鋭い三叉槍が襲いかかり。
気付けば阿鼻叫喚。それでも、逃げることすら許さないと雲雀と骸の猛攻は止まない。
弾丸すら弾き飛ばし、瞬きの時間すら与えずに震うトンファーは、一撃必殺。うまく逃れたとしても、続けざまに来る足技からは逃れようもなく。
幻覚をうまいこと逃れたとしても、繰り出される槍術は急所ばかりを狙ってくる。

「何ですか、これ。拍子抜けにも程があります」
「全く、腑抜けばかりじゃないか」
「これは、帰ったら手合わせ願いたいところですね?」
「臨むところだ」

くつりと喉を震わせて、骸が笑う。
それに雲雀も同調して、二人は仕上げとばかりにボンゴレギアを発動させる。
ねぇ、ほら、やっぱり仲良しでしょう? なんて、そんな二人の後ろ姿を見てクロームは一人微笑んだ。

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